平安時代の着物について

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平安時代中期(966~1041)頃の職業別服装についてまとめました。

📝目次

三十六歌仙絵を公開 静神社で閲覧会
男性の装束の概要

男性の装束には、公・私両面に数多くの制約がありました。

「公」の部分の装束は朝廷に出仕するための勤務服で、昼間は「束帯」、夜間は「衣冠」を着用し、頭には冠をかぶるものでした。

上着である「袍」には、脇下の縫い合わせた「縫腋袍(ほうえきほう)」と脇下を縫い合わせない「闕腋袍(てつてきほう)」の2種類があります。

公卿(くぎょう)と文官は縫腋袍を、四位以下の武官は闕腋袍を着けました。

「私」の部分の代表的な装束が「狩衣(かりぎぬ)」です。

狩衣は簡易な作りで色彩も文様も自由で、頭には冠ではなくラフな烏帽子(えぼし)をかぶりました。

着用が簡便で運動性も高い便利な衣類であり、中・下級帰属が日常着として用いました。

上流貴族は狩衣では簡易すぎると、裾に欄(らん)をつけて袍に少し近づけた「直衣(のうし)」を日常着としました。

女性の装束の概要

女性の装束は、男性の装束のような細かな制約が少なかったため、私的な利用、自由なおしゃれを楽しむことが多く、

いわゆる「十二単(じゅうにひとえ)」に代表される、華やかで美しい装束が発展しました。

女性の装束で最もフォーマルな姿が「女房装束」です。

女房は貴人にお仕えする女性のことで、お仕えする女主人の前では常にフォーマルなファッションを身に着けました。

女主人は、よりカジュアルな姿をしていました。

「女房装束」から唐衣(からぎぬ)と裳(も)をはずし、代わりに「小袿(こうちぎ)」を羽織った姿は、

高貴な女性たちの私的な準正装という扱いがなされました。

代表的な装束

文官装束、武官装束、狩衣装束、女房装束

文官の束帯装束(図1)

図1 文官の束帯装束の構成 

静神社の三十六歌仙絵図録より「右七 藤原朝忠」

【上○】  

垂纓冠(すいえいのかんむり):「纓」を後ろに垂らす

【中左○~】 

縫腋袍(ほうえきほう):脇が縫われた袍。黒は四位以上の当色。有文であることが多い。

衵(あこめ):下襲の下、単衣の上に重ねて着用する。束帯では紅色を用い、袍の盤領から紅色が見えることが多い。

笏(しゃく):束帯の時にのみ持つ。

【中下○】  

石帯(せきたい):袍の腰は革帯で束ねた。束帯の名称もこれによる。帯の表面は玉・石などでかざった。

【下左○~】

下襲の裾(したがさねのしり):下着の単衣の上、袍の下に重ね着するのが下襲。裾を後ろに長く引き、「臥蝶丸」の文様が付けられている。

大口袴(おおぐちはかま):表袴の下にはく紅の下着。裾から少しだけ見せて着けていた。

襪(しとうず):指の股を作らない足袋

表袴(うえのはかま):大口袴の上に重ねて佩く。「窠に霰(かにあられ)」文様が付けられることが多い。

武官の装束(図2)

図2 武官の束帯装束の構成 

静神社の三十六歌仙絵図録より「左十一 藤原敏行」

【上○左~】

緌(おいかけ):馬毛のブラシ状パーツ。由来はよくわかりません。

巻纓冠(まきえいのかんむり):活動をしやすいように武官は後ろの「纓」を巻き上げた。

【中上○左~】

闕腋袍(けつてきのほう):活動をしやすいように腋が縫われていない袍を身に着けた。黒は四位以上の当色。緋色は五位の当色。有文であることが多い。

平胡簶の矢(ひらやなぐいのや):矢羽根は左近衛府が大中黒の「鷲羽(わしは)」、右近衛府が細かい切班の「鷹羽(たかは)」とされた。

【中下○左~】

衵(あこめ):下襲の下、単衣の上に重ねて着用する。束帯では紅色を用い、袍の盤領と袖口から紅色が見えることが多い。

太刀:束帯の時は「飾り太刀」を佩用しました。

【下○左~】

弓:儀仗では蒔絵などで飾った見栄えの美しい弓を持ちました。

平緒:束帯で太刀を吊るすための帯。結び余りを前に垂らした。

表袴(うえのはかま):大口袴の上に重ねて佩きます。「窠に霰(かにあられ)」文様などが付けられました。

狩衣装束(図3)

図3 狩衣装束の構成 

静神社の三十六歌仙絵図録より「右十六 藤原仲文」

【上○】

烏帽子(えぼし):烏塗(くろぬり)の帽子。薄い羅で漆をかけない柔らかい「委烏帽子」、漆を強くぬった「立烏帽子」などの種々のバリエーションがあります。

【中○左~】

狩衣(かりぎぬ):狩に際して用いた衣であることによる名称。着用から簡便で動きやすいことから狩用から漸次一般の私服となりました。闕腋袍と同様に脇をあけ、袖は後身にわずかに綴じ付けました。位袍と異なり、色彩は自由とされていました。

単(ひとえ):狩衣装束では、下着である白小袖の上に「単」と袴を着け、その上に狩衣をまといます。単の代わりにカラフルな「布」を着ることで狩衣との「重ね色目」のお洒落を楽しむようになりました。

【下○左~】

狩袴(かりばかま):細身で活動的な麻製の白袴。狩衣装束が正装となると、絹製の「指貫(さしぬき)」が用いられるように変わりました。

袖括り(露先):大きな袖口が邪魔にならないように袖端を紐で括りました。袖括りの緒(露先)はお洒落表現のポイントとされました。

女房装束(図4)

図4 女房衣装の構成 

静神社の三十六歌仙絵図録より「右二 伊勢」

【上○】

檜扇(ひおうぎ):極彩色の美しい絵が描かれます。顔を隠すために用いたので「大翳(おおかざし)」とも呼ばれます。

【左側上○~】

裳(も):表衣の上から腰部の後方のみを覆います。腰に結びつけて装着します。

引腰(きひごし):喪の背中に当る部分は「大腰」、後ろに長く引く帯状の腰は「引腰」と呼ばれます。

表着(うわぎ):唐衣・喪の下、五衣の上に着用します。

紅袴:原則として紅の長袴を着けました。

【右側上○~】

唐衣(からぎぬ):袷で、丈は短く、表衣の上に着ます。文様はある綾または錦を用いて仕立てられます。

五衣(いつつぎぬ):衣の重ねは5枚重ねが標準となり、「重ね色目」が楽しまれました。

単衣(ひとえ)五衣の下に着る裏のない衣です。五衣よりも一回り大きく仕立てます。

参考文献

鈴木敬三『有識故実図典ー服装と故実ー』(平成7年吉川弘文館)

八條忠基『詳解有職装束の世界』角川ソフィア文庫(令和2年KADKAWA)

八條忠基『有職装束大全』(2018年平凡社)

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